Creator’s Lounge/写真家・トキに聞く

七海ひろき氏出演!書籍化も決定した大反響
『夢の雫、黄金の鳥籠』TVCM
制作秘話 Vol.2 写真家・トキ インタビュー

 七海ひろき氏出演の漫画『夢の雫、黄金(きん)の鳥籠』14巻TVCM・PVが大反響だ。再生回数は累計50万回(※)を超え、篠原千絵氏が描く16世紀トルコ・オスマン帝国の世界を表現したその映像美に、ファンから多くの感想が寄せられている。そんな中、本映像の七海氏の姿と原作コミックを融合させたデジタルアートブックの配信がこのほど発表された。CMとしては極めて異例の書籍化まで実現した、美しい映像の舞台裏はどのようなものだったのか。制作秘話第2弾として、撮影を担当した写真家・トキ氏に話を伺った。

(※)YouTube、SNS公開中のTVCM・ロングバージョンPV累計再生回数(2020年7月末時点)

【プロフィール】トキ

男女2人で活動する写真家デュオ。光を巧みに操る幻想的な作風で、ファッション、アートなど様々なジャンルで活躍。国内外で高い評価を得ている。




――漫画『夢の雫、黄金の鳥籠』を七海ひろきさんのお一人三役で表現する今回の企画について、オファーがあった際どのように思われましたか?

佐伯:僕たちが普段撮っている作品のファンタジックなイメージと、漫画の世界という意味でのファンタジックさが上手くリンクできるかもしれないと思いました。作品を読んで、漫画ならではのキラキラした部分に惹かれたので。
僕たちが写真と向き合うときに意識しているのは「時代感がない質感」で、「今」というより「この写真いつ撮ったんだろう?」と思わせるようなトリックをいつも取り入れているんです。今回は題材がオスマン帝国という過去の時代なので、その点が、見た人をタイムスリップさせるような感覚に繋がればいいなと考えました。

公開中の『夢の雫、黄金の鳥籠』ロングバージョンPV

――作品を読まれたときの感想を教えてください。

真鍋:ビックリしました。漫画をしっかり読むのはかなり久しぶりで、私が学生時代に読んでいた少女漫画とは随分違うなと思って。歴史の描写やストーリー、殺したり殺されたりするシーンなんかもたくさん出てくるし、スレイマンとイブラヒムのボーイズラブのような描写まであって、作品の壮大さが衝撃的でした。

佐伯:僕は全体の重厚感が印象に残りました。あとは男性的な視点かもしれませんが、女性目線の表現の美しさにハッとしましたね。イブラヒムとヒュッレムが格子越しに手と手を重ね合わせるシーンは、肌感覚の「エロス」というか、ジーンと胸にくる感じというか。いわゆる男女関係の表現、「エロ」ですら美しさに変えてしまうところがとても興味深かったです。

イブラヒムとヒュッレムの指先だけで表現されるラブシーン

――映像には背景が何もなく、登場人物の姿だけが映っています。撮影にあたって、どういったことを意図されていたのでしょうか。

佐伯:作品は歴史物ですが、背景の要素は入れない。入ったとしてもごくわずかにして、人物に寄った、人間ドラマに焦点を当てた映像にしようというアイデアは、みんなで打ち合わせる中で早い段階から決まっていました。僕たちはライティングでドラマチックさを作るのが得意だと思っているので、ライティングを軸にアイデアを広げていきましたね。

僕たちのスタンスとして「空間をまず作る」というのがあって、人物に対してライティングをどう当てるかというより、空間を作った上で、その中で人物がどう動くかの方が重要だと思っています。そのスタイルが今回も活きているかなと思います。 今回の撮影では羽根や花などの小道具も使っていますが、小道具そのものの形より、やはりそれも含めて「空間」としてどう見えるかが大切なんですね。仮に何を持っているのか「形」がはっきり見えなくても良くて、その「見えない」というのもひとつのドラマだと思うんで。一枚の絵としてドラマチックに見えたら、それが一番面白いかなと思います。

――まさに各場面ごとにドラマを感じる美しい映像ですが、シーンごとに「空間のイメージ」のようなものはありましたか?

佐伯:そのキャラクターに合う空間は何かというのは考えました。スレイマンのシーンはモスク(編注:イスラム教の礼拝堂)や王宮のような大きな建築物、広々した空間にスレイマンがいるというイメージを常に持っていました。
映像全体として中盤の月夜のシーンがキーになりそうだなと思っていたので、イブラヒムはそこですね。ヒュッレムが横たわっているシーンはもうそのまま、「黄金の鳥籠」です。籠の中にいるイメージでした。

スレイマン、ヒュッレムの各シーン

――衣装がキラキラと光り輝く様子も非常に印象的でした。トキさんから何かリクエストは出されたのでしょうか。

佐伯:僕たちは元々キラっと光を反射させた作品が多くて、それはその人物の持つ純粋さや崇高さ、「その人が放つ光」みたいなものを捉えようと思うからです。なので今回もそういったものを撮れるように、それぞれのキャラクターの衣装に「光る要素」が欲しいというのは伝えましたね。
たとえばラストの、スレイマンのターバン飾りの石が青く光るところなんかは、特に上手くいきました。全体の撮影時間を管理する上では、狙って撮ろうとするとドツボに嵌まるという懸念もあったのですが(笑)、本番ではよく光りました。

――今回の映像は、写真をつないで動画にするアニメーションの手法で作られています。静止画で構成されているのにむしろダイナミックさを感じましたが、撮影はいかがでしたか?

佐伯:普段撮る写真は画面比率が2:3なのに対して、今回は映像なので比率が16:9で、カメラテストを行ったときに随分と画面が切れてしまうなと思ったんですね。なのでその点を考えるようにはしていましたが、一番大事にしたのは、人物の表情に直感的に、反射して撮ることです。頭で撮るというよりも、七海さんのその瞬間の表現にフォーカスして寄るならぐっと寄る、というように。
漫画の印象的なシーンは、白抜き(編注:人物の背景に絵を入れない演出)で人物の表情がバーンと大きく入っていたので、それに近いイメージで撮ったものをドンドンドンと重ねていけばいくほど、漫画の持つスピード感が伝わるかなと思っていました。だから画角を計算して撮るというより、人物の表情や感情が伝わるようその場の感覚を優先しました。
三脚も準備していましたが結局ほとんど使わず、ほぼ手持ちで撮りましたね。そのあたりが結果的に、臨場感として伝わってくるんだと思います。これは吉開監督(編注:監督として企画に参加した映像クリエイター・吉開菜央氏)がその場の感覚に任せてくれる方だったから出来たことでもありますね。楽しかったです。

――被写体としての七海さんはいかがでしたか?

佐伯:とても綺麗でした。変な言い方かもしれませんが、特にヒュッレムは改めて「この人綺麗だな・・・」と。やっぱり七海さんのイメージとして「格好良い」「凜々しい」という男役の印象が大きかったので、ヒュッレムの姿には妖艶さすら感じてビックリしました。出来上がった映像にもその驚きが現れていると思います。
スレイマンは「神々しい」のひと言ですね。ライティングもそれを意識して、通常より近くからハイライトを強くして撮りましたが、存在自体が一番「ファンタジー」でした。ラストの鎮座するスレイマンのシーンなんて、もうすごいことになっていますよね(笑)。
イブラヒムは、男性からすると三人の登場人物の中で最も共感しやすいと思うんですよ。スレイマンはやっぱり、その位置にいる人じゃないとちょっと感情移入できない(笑)。 だからイブラヒムは、七海さんの「戸惑い」「罪の意識」の表情がとても魅力的で印象に残っていますね。

真鍋:イブラヒムのシーンといえば、撮影の待ち時間の七海さんが格好良かったです。イブラヒムの姿の七海さんが、ヒュッレムのウィッグの髪を指でくるくるっと触りながら待っている様子が、彼女の髪を触っている彼氏みたいな感じでドキっとしました(笑)。

――印象に残ったシーンはどこでしょう?

真鍋:私はスレイマンが少し顔を傾けて、羽根を差し出しながらこちらを見るシーンですね。TVCMだと6秒目あたりです。光を当てすぎなんじゃないかというぐらいギリギリのところで調整したライティングも上手くいって、神々しさがよく表現できていると思います。あとはロングバージョンPVの18秒目あたり、目の前に立つスレイマンをイブラヒムが見つめる、少し引いた画面も好きです。こちらは七海さんが演じるイブラヒムの表情が好き、という意味ですが(笑)

佐伯:僕はやっぱりイブラヒムの目に寄ったシーンですね。月夜のシーン、イブラヒムとヒュッレムがキスをする直前です。イブラヒムの迷いというか、感情が一番詰まったシーンだと思います。やってはいけないことをやってしまう戸惑いを七海さんが表現されていたので、そこを撮ろうと思いました。

――完成した映像を改めてご覧になって、いかがでしょうか?

佐伯:自分たちが関わったものですが、出来上がったものはそう思えないぐらいファンタジーの世界に仕上がっていて、ちょっと不思議な感覚になりました。これって僕たちが撮ったんだっけ?と思うぐらいです。
真鍋:たくさんの方に見ていただいているようで嬉しいです。ありがとうございました。

商品概要は以下のとおり。
写真と漫画が融合した新しい美の世界
FCαスペシャル
篠原千絵×七海ひろき
『夢の雫、黄金の鳥籠 デジタルフォトアートブック 夢幻七夜-むげんななや-』

電子版:価格は各販売サイトでご確認ください。

https://www.shogakukan.co.jp/digital/09D087870000d0000000

■制作秘話 vol.1 監督・吉開菜央インタビューはコチラ
https://shogakukan-comic.jp/news/25835
■FCα『夢の雫、黄金の鳥籠』1~14巻好評発売中
https://shogakukan-comic.jp/book-series?cd=27970
■『夢の雫、黄金の鳥籠』最新1巻発売記念七海ひろき氏CM情報はコチラ
https://shogakukan-comic.jp/news/25517
■『夢の雫、黄金の鳥籠』書店フェア情報はコチラ
https://shogakukan-comic.jp/news/25522