Creator Lounge/たみふる氏に聞く

『付き合ってあげてもいいかな』1巻発売記念インタビュー

女の子同士の恋をありふれた“普通の恋愛”として描く挑戦
~「マンガワン」人気作家たみふる、最新作に込めた思い~

 冴子とみわ、女子大生2人の“同性同士の恋”を、ごく自然体の“普通の恋愛”として描く作品『付き合ってあげてもいいかな』が話題だ。本作はコミックアプリ「マンガワン」で連載が始まるや、瞬く間に読者数を伸ばし、連載開始からわずか4か月で95万人に読まれる人気作品へと成長。女性同士の恋愛を描いた作品を普段読まない層、特に女性からの支持を集めている。
待望のコミックス第1巻発売にあわせ、作品の誕生秘話やこれからの展開など、作者のたみふる氏に聞く。

【プロフィール】

  • 『付き合ってあげてもいいかな』
    たみふる

    2012年頃より執筆活動を開始。2014年『女神さまと呼ばないで!』にて商業デビュー。2016年『空気人形と妹』連載開始。2018年8月よりコミックアプリ「マンガワン」にて『付き合ってあげてもいいかな』を連載中。

―― 一般的には、女性同士の恋愛=男性読者が読むものというイメージがありますが、“女性読者に向けた作品”というのは意識されていますか?

私はもともと女性同士の恋愛もの、いわゆる百合ジャンルで同人誌を描いていて、読者さんの8割が男性だったんです。でもあるとき「女性読者ももうちょっと欲しいな」という欲が出て(笑)。一度同人誌で女性読者を意識した作品を描いてみようと思って描いたのがみわと冴子のお話です。その作品をベースに描いているのが、連載中の『付き合ってあげてもいいかな』です。
人気作品の傾向を自分なりに分析して、女性読者には“おしゃれさ”や“リアル感”が大事なのかなと考えたのですが、結果的にはそれを読みたいと思ってくれた男性読者の方も多くて。『付き合ってあげてもいいかな』で意識している2点はどちらも、男女問わず大事な要素だったことに気付けました。なので、初めは「女性向け」を意識していましたが、今の感覚としては、変わらず男性も付いてきてくれているのかなと思っています。
他に考えていたことは、前の連載(『空気人形と妹』集英社刊)が終わったときに、それがかなりニッチな内容だったので、「次はメジャーな内容にしよう」と。でも「メジャーとは?」「みんなが好きなものって⁇」と煮詰まってしまって・・・。最終的には「自分が読みたいものを作ろう!」と吹っ切れて、この作品になりました。

――ご自身が読みたいものというのは、どういったお話だったんでしょう?
『付き合ってあげてもいいかな』
純愛でも運命の恋でもない、みわと冴子の交際の始まり。
(コミックス1巻より)

女の子同士が美しく、可愛く、惹かれ合って恋をするファンタジー的な百合作品も面白いけど、もっとリアルな女性同士の恋愛ものを読んでみたいと思っていました。そういう要素を入れ込んで冴子とみわの物語を同人誌で描いたら、「マンガワン」の編集さんに声をかけていただき、「この作品はより多くの人に読まれるべき。男性読者だけでなく、女性にも絶対もっと読んでもらえる!」と言ってもらって、今に至る感じです。

――みわと冴子の恋愛模様だけでなく、二人の周囲も含む大学生活そのものの描写にも非常にリアリティがあると感じます。ちょっと爛れているところも大学生っぽい(笑)。

ありがとうございます(笑)。そもそもこの話、自分としては百合として打ち出していなくて。百合というとどうしても“禁断の恋”“男子禁制”的なイメージがありますけど、禁断でもなく、逆に尊くもなく、男子もいる“普通の世界”で、女性を好きな女性同士が恋愛してるぞっていうのを描きたかったんです。女性だけしか出てこない閉じた関係じゃなく、男友達にも受け入れられている世界を描くほうが、読んでくれた方にも救い…というと大げさですけど、楽に感じてもらえるのかなと。

――みわと冴子が所属する軽音部の面々も、二人を特別視せず“普通のカップル”として見守っていますね。カップル側、それを見守る側、双方の「恋愛あるある」がたくさん描かれているので、読み手も冴子とみわを特別視せず、自然に“普通のカップル”と捉えているのかもしれません。
『付き合ってあげてもいいかな』
二人の交際を知った友人の反応
(コミックス1巻より)

その辺の“同感できるポイント”というのはけっこう意識しています。軽音部のみんなもそうですし、みわと冴子も、同性同士ゆえの悩みはもちろん要所要所では入れるけれど、決してそれだけがメインじゃない。同性同士かどうかは関係なく、恋人同士のよくあるすれ違いや悩みをピックアップしてストーリーに取り入れるようにしています。

――デートでの相手の服装に不満を抱いたり、付き合って1か月頃の“やるやらない問題”など、すべてのカップルに通じる話題ですね。下心も隠さず、オープンに語るシーンを見て「あっ、そんな風に話していいんだ」と読んでいて安心した人がいると思います。
『付き合ってあげてもいいかな』
友人達に水を向けられ悩みを告白するみわ
(コミックス1巻より)

そうですね、セックスに関する描写もこれから入れていきたいです。そもそもこの二人、ノリと勢いがきっかけで付き合っちゃってますけど(笑)、それって実際にもよくあることで。同性と付き合うことに限らず、純愛じゃないけど・・・みたいなことや、性欲に関すること、一般的に後ろめたい、いけないとされることも、作品を通して「いいんだよ」と言えたらいいなと思います。

――最後に、この二人の未来について、少しだけ教えていただけませんか?

付き合う以上は「付き合いたての気持ちを一生保つ!」というのは幻想で、どんな二人であれ、関係ってプラスにもマイナスにも変化していくものだと思うんです。
みわと冴子の関係についても、これから読者の方々が予想している以上に変化していくことになります。
今後の展開については「信じて付いてきてください」としか言えないのですが…あまり変化そのものにとらわれず、二人の人生を一緒に追っていくような形で作品を楽しんでいただきたいです。

■『付き合ってあげてもいいかな』第1話試し読みはコチラ
https://www.urasunday.com/iikana/index.html
『付き合ってあげてもいいかな』

純愛でも運命の恋でもない、みわと冴子の交際の始まり。(コミックス1巻より)

『付き合ってあげてもいいかな』

二人の交際を知った友人の反応(コミックス1巻より)

『付き合ってあげてもいいかな』

友人達に水を向けられ悩みを告白するみわ(コミックス1巻より)